イタリアのメタルバンドRhapsodyが紡いだ物語 -第一章 Legedary Tales-
エイプリルフール、ですか。
私はバカがつくほどの正直者(というとちょっと嘘になるが)なので、嘘はつきません(これもやや嘘)。
当然、以下のブログも嘘は無い。私の真心で書き上げたものだ(迫真)。
そこを念頭において読んで下さったら幸いである。
さて、一昨日の予告に挙げた通り、Rhapsodyの一連アルバム群「Emerald Sword Saga」について語ろうと思う。
まずは、定石通り1stから。
- アーティスト: ラプソディー
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2011/11/02
- メディア: CD
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「Legendary Tales」。伝説の物語。誠に安直なタイトルである。
なにより、ジャケットが妙に安っぽい。戦士が馬にまたがり竜と対峙する。まるでスーパーファミコンのマイナーなゲームソフトみたいなデザインなのだ。
Rhapsodyのロゴマークはなかなかカッコイイと思うのだが、そこがちょっとばかり残念である。
このジャケットのせいで「Rhapsody=ダサい=クサい=にわか者御用達」みたいな風潮を生んでいるのではないかと思うと、なんともやりきれない......
「はやく本論に入れ」
はい(震え声)。
というわけで、早速1曲1曲の曲解説に入りたいと思う。
なお、この解説はクラシックも和声学も管弦楽法も、ひいては詞の理解に関してもにわかものレベルな私によるものなので、
「こいつ、分かってねえな」だの「ここ誤解してますよ」といったツッコミは歓迎する。
ちなみにエメラルドソードサーガを理解するために、頻出単語について簡単な説明をしたい。
氷の戦士:主人公。
アクロン:暗黒神クロンの名を引き継ぐ暗黒王。ラスボス。
アルガロード:「Enchanted Lands」の中心となる国。
アイレンガード、エルガード、アンセロット:「Enchanted Lands」を構成する国々。
アレシウス:魔法使いのおじいさん。エメラルドソードサーガのストーリーテラー。
アルワルド:アンセロットの英雄であり、氷の戦士の戦友。
アイリン:アンセロットの王女。
「簡単すぎるわ!」
おう、すまんな。
いずれ新たに「Emerald Sword Saga小辞典」を製作すると思うので、よろしく。オレ一人じゃ難しいと思うが。
1:Ira Tenax
このタイトルはラテン語で、「強い怒り」みたいな意味を表す。歌詞もラテン語である。
打倒すべき暗黒王に対する怒りを表す曲だ。
そしてこの曲を表現するためにゲストミュージシャンを用意した、力強いクワイア。
ゲーム大好きっ子には悪魔城シリーズを想起させる幕開けだ。
ちなみにこのバンドのオーケストレーション(管弦楽アレンジ)は、キーボードのAlex Staropoliによって行われている。
ほとんどの音はシンセサイザーによるものだが、一部ストリングス(バイオリンソロ)は生録なのだそうだ。
2:Warrior of Ice
さあ、エメラルドソードサーガの主役、「氷の戦士」の登場である。
氷の戦士は暗黒王を倒すというアルガロードの王の命を受けて、エメラルドソードを手に入れる旅へ出るのだ。
ここからLucaのギターが鳴り響き、Fabioの歌声が戦士の歌を高らかに歌い上げる。
クワイアも先ほどのクラシカルなものと異なり、より力強い勇壮なものとなっている。
Rhapsodyの基本的な要素が詰まった、物語のはじまりに相応しい曲だ。
3:Rage of the Winter
「冬の怒り」。
氷の戦士が率いる軍隊は凍えるような寒さの中、王の命のために進んでゆく。
聞き所はなんと言っても、猛烈に盛り上がるサビ部分、そしてLucaのギターが唸りまくる間奏である。
間奏は美しい転調の嵐であることも付け加えておこう。ちょっと和声を勉強した人なら、「Rhapsodyってすげぇんだなあ!」と思うだろう。
「そんなにわか者はあなただけです」
そ、そうか。
ちなみにこの曲はベスト盤「Tales from Emerald Sword Saga」でシンフォニックな側面を強化したアレンジが収録されており、
より重厚に冬の辛さが表現されている。
4:Forest of Unicorns
道を通り抜けた先に村があり、そこには氷の戦士の先祖が闘った「一角獣の森」があった。
というわけで、フォーク(民謡)メタルである。
このRhapsodyというバンドはEmerald Swordのような重厚ナンバーだけでなく、この曲のような軽めのナンバーも存在しているのだ。
笛の音はシンセサイザーの音ではなく生録であり、キーボーディスト、アレックスの弟マニュエルが演奏している。
今後も笛の音がちょくちょく出てくるが、その音はほぼすべてマニュエルの演奏によるものである。
5:Flames of Revenge
村を抜けて訪れた地アンセロットの惨状を見る。王女アイリン姫も暗黒王にさらわれて以来行方が知れないことを知る。
そして氷の戦士は、心に「復讐の炎」を燃え滾らせるのだった。
というわけで、お待ちかね(?)Rhapsodyの疾走ナンバーだ。
私はこのアルバムの中で、この曲が一番好きである。
練られたコード進行に、感情のこもったメロディ。
このような曲を「クサい」として忌み嫌う人もいるかもしれないが、私にとってはたまらないのである。盛り上がるには持ってこいであろう。
6:Virgin Skies
「汚れ無き空」(って訳したけど、フツーに解釈したほうが合ってるのかしら?)の下、戦士は友であるアルワルドと出会い、率いてきた軍隊を彼に任せて、エメラルドソードを探す旅を続ける。
前の曲で疾走した後は、この曲のような落ち着いたナンバーで一休み。
ツーバスがドコドコ鳴るようなドラムも、太いエレキギターの音もない。
あるのはストリングスと、ハープシコードと、笛だけ。
なぜかって?次の曲がこのアルバムのキラーチューンだからさ。
7:Land of Immortals
「不朽の地」エルガードに到着した氷の戦士。ここで彼は魔法使いアレシウスと出会い、彼からエメラルドソードが封印されている門を開くための3つの鍵のうち、1つ目と2つ目の鍵のありかを授かる。
要するにそういう内容であるのに、またもや疾走ナンバーである。
ちなみに曲の構成はAメロとサビをそれぞれ3回繰り返すシンプルな構造であるが、
これまた間奏に意匠が凝らされているのだ。2番の後の間奏の途中で静かな展開のBメロが挿入されており、より重厚な味わいを醸している。
ライブでも必ず演奏される、人気のナンバーだ。
ちなみにボーカルのファビオ・リオーネはこの曲のレコーディングの際、「こんな歌は完全なるクソだ!」と吐き捨て、作詞作曲を担当したルカやプロデューサーのサシャ・ピート(ミキシングやベースを担当)の顔を強ばらせたというエピソードがある。
ファビオも最初はルカが織りなすクサメタルの世界についていけなかったということだろうか。
8:Echoes of Tragedy
鍵を探しに行く前の夜。氷の戦士はアンセロットの惨状を思い、「悲劇のこだま」を見る。
彼の中で惨劇がこだまするのである。
はじめはピアノとストリングスが中心となる静かなアレンジで始まるが、
後半部分でオルガンとクワイアが入り、力強いアレンジとなる。
これは氷の戦士が悲劇を思って復讐の炎を再び燃え滾らしたことを意味する。
となると、次は......そう、疾走ナンバーである。
9:Lord of the Thunder
心燃ゆる氷の戦士、愛馬に跨がってエルガードの周りを駆け回る。
そのときに轟いた雷を見て、戦士は祈る。
「雷の神」よ、我を護りたまえ!
......それ以外のことについては、他の疾走ナンバーとあまり変わらないので、割愛。
サビはまさに「コーラス」。クワイアが力強く歌い上げるのだ。サビの勢いなら「Emerald Sword」にも負けない勢いがある。
ちなみにこのコーラスにはファビオがいない。
どうやら彼は先にドイツ(プロデューサーのサシャが持つスタジオ)からイタリアに帰国してしまったらしく、しぶしぶルカとアレックスとスタジオミュージシャンで歌ったものを使用したとのこと。
10:Legendary Tales
「伝説的な物語」。
エルガードの人々は、戦い前の最後の平和を祝うのであった...。
というわけで、アルバムタイトル曲。およそ8分にわたる大作である。
Rhapsodyのアルバムの特徴のひとつに、「最後の曲は長編」というものがあり、1stであろうと例外ではないのだ。
この曲は民謡調の部分とメタリックな部分を交互に入り混ぜており、見事な緩急をつけている。
そして、次なるアルバムへの期待感を持たせながら、静かに終わってゆくのである。
さあ、これから氷の戦士は鍵を探しに行く。果たして、氷の戦士は3つの鍵を探し出し、エメラルドソードを手に入れることが出来るのか?
次回「Symphony of the Enchanted Lands」、お楽しみに!
「長いよ、クソ野郎!!」
ごめん、ごめん。流石に好きなものを語るとこんなにも長くなってしまった。
しかも様々な資料やレビューを読みながら構成したのだから、時間もかかってしまった。
たった1枚のアルバムを紹介するのに、
というわけで、次回は「The Symphony of Enchanted Lands」の紹介である。
もっともこの「Legendary Tales」のレビューだけで相当な精魂(と時間)を使ったので、次の更新はしばらく先のことになりそうだが、
気軽に楽しんでいただければ幸いである。
そして、なによりこのブログを読んでRhapsodyの音楽を聞いてみたいと思う人が増えてくださったら......
「それはとっても嬉しいなって、思ってしまうのでした(by 鹿目まどか)」
「おい、このフレーズを引用するの何度目だよ?」
「ザ・インタビューズでも何度か見たぞ?」
いいじゃん。好きなんだもの。