君は「平沢進」を知っているか/カフェバー「GAZIO」に行ってきた
私は4年前から、平沢進というミュージシャンの音楽を聞いている。
ただ、平沢進という人が何者なのか、意外とご存じない方が多いかもしれない。かくいう私も4年前にtwitterでフォローするまでは全然知らなかったのだ。
この男は、1979年にバンドP-MODELのギターボーカルとしてメジャーデビューして以来、独自の活動を続ける希有なミュージシャンなのである。
エレクトロミュージックを基本とするが、その作曲の幅は広く、パンキッシュな音楽からプログレッシブ・ロックの影響を受けた曲、果てはタイでの経験を生かした曲を生み出している。
たとえば、長州力の入場曲「パワー・ホール」。この曲を聞いたことある人はたくさんいるだろう。
実はこの曲は、平沢進によって作曲・編曲されたものなのである(レコード会社の権利問題ゆえ『異母犯抄』という変名であるが。)。
氏はプロレスについて無知だったらしく、なおかつ「YM○っぽい曲」というオーダーにカチンときたらしい。
それゆえ、トラックを3つ(リード・ベース・ドラム)しか使っていない(自称「手抜き」)かなりシンプルな構成になっているが、
それでもなお大変印象的なナンバーとして現在でも随所で使用されている。
最近はベルセルクの音楽で有名であろう。
たとえば、PS2ソフトのOPテーマ「Sign」。この曲がきっかけで本人出演のニコニコ生放送まで組まれるほどである。ワージッ!
BERSERK(PS2)01-オープニング - YouTube
他にも代表作を上げて行けばキリが無いが、僕はそんな個性豊かな平沢進の音楽に魅了されたのである。
いずれ、Rhapsodyのそれのように、平沢進作品についてのレビューも書くことになるだろう。
さて。平沢進はネットの情報によると、茨城県つくば市に拠点を構えてるそうなのである(本人は「つく頂(筑波山の山頂)」と自称しているが)。
私も父の仕事の都合でつくばに越して長いので、このような大物ミュージシャンが近所に住んでるなんて、想像だにしなかった。
あのヒラサワが、近所にいる。そう思うだけでもかなりわくわくしたものであった。
そして今年4月、思いもよらなかった情報が入る。
平沢進の「人の兄」である平沢YOU1(裕一)が、つくばにカフェバー「GAZIO」を開いたのだ。
しかも、調べてみればつくば駅からさほど遠く無い。
これはヒラサワのファンとしては行くべきだろうと思ったのだ。
そして先週のある日、私は勇気を出してGAZIOの門を開いたのである。
(これが「GAZIO」の門だ!)
入店したのは20時頃。私はなんだか異世界に入ってしまったようで、足がすくんでしまった。
店に入ると、店員が2~3人ほど、先客が数人、そして白ヒゲのがっしりしたおじさんが一人。
もしかして、あの白ヒゲのおじさんがYOU1さんなのだろうか。たしかに顔をよく見ると平沢進にちょっと似ている。
もうそのように考えただけでミーハー心に溢れた私はドキドキして仕方がなかったのである。
いきなりYOU1さんと話をするのも気が引けるので、まず私は飲み物を注文しようとメニューを読んだ。
このGAZIOではマスターの弟平沢進の作った曲の名前を冠したカクテルがひとつ600円で飲むことができるのだ。
私は数分悩んだ末、Twitterで噂になっているノンアルコールカクテル「庭師KING」を注文した。
平沢進のtwitterによると、色は「泥水」で、香りは「草むら」らしい。
一体どんなものが出てくるのだろうと思っていたら......
こんな飲み物が出てきた。
飲んでみると、カルピスとコーラを割ったような味がした。言う程悪くはない。
ただ、葉っぱがなんだか邪魔だがw
曲のイメージに合っているかどうかはヒラサワのみぞ知るだが、大地のイメージが現れているなかなかおいしい飲み物であった。
ちなみに庭師KINGはこんな曲である。
Susumu Hirasawa - Gardener King (庭師King) - YouTube
庭師KINGをちびちび飲みながら(一気に飲んじゃうと勿体ない)、店をぐるっと回った。
特に私の目を引いたのが、グラヴィトンの実物であった。
これはヒラサワがLIVEのときに使用する楽器である。
右のタイヤを回して発電(横の紙には「あまりまわさないでね」と書いてあった)し、8つのボタン(安価なmidiキーボードGZ-5に接続されている)を使って音をならすものである。
おもしろい形をした楽器(?)である。平沢進はなんだか面白い形をした楽器をたくさん用意しているのだ。
この当たりに氏のセンスを感じる人も少なくないだろう。
庭師KINGを飲み終わった私は、なんだかお酒が飲みたくなってきたので、アルコール入りのカクテルを注文することにした。
悩んだ挙げ句注文したのは、数量限定で販売されている「アンチ・ビストロン」。
どんな飲み物かは想像できなかったが、出てきたのはこんな飲み物である。
ジンベースのカクテルだった。
ぷかぷか浮いている緑色の物体は、アイスプラントという野菜である。
ほんのりと塩味を感じる味で、ぷちぷちとした食感がおいしい、珍しい野菜である。
どうやら平沢進の自宅で栽培していたものを使用しているそうだ。
これまた、大変おいしく頂くことが出来た。
ちなみに、アンチ・ビストロンはこんな曲である。
お酒が回ってきた私は、ぼんやりと店内BGMに耳を傾けていた。
この日は平沢進が選曲していたらしく、ある一つのバンドの曲を中心に流されていた。
80年代ニュー・ウェーブ。特にDEVOなどに代表される、シンセサイザーを大胆に用いた曲たち。
僕はこのような音楽が割と好きである。ひとりでちびちびとアンチ・ビストロンを飲みながら、店の雰囲気にすっかり慣れていた。
ぼんやりとBGMに耳を傾けていると、徐にYOU1さんが話しかけてきた。
「4-D(P-MODELに在籍していたメンバーがやっているバンド)とか、きく?」
はわわ、あのYOU1さんに話しかけられちゃった!!
あの、「けいおん!」平沢唯の元ネタである平沢進の実兄の裕一さんに、話しかけられちゃった!!
はわわ、どーしようあたし!!とか思ってしまって、思わず何度か聞き返してしまった。
質問の意味を理解した私は、このように答えた。
「あまり聞かないですね...。P-MODELはよくきくのですが」
ついで私は、P-MODELの1stが好きだということを伝えた。YOU1さんは少しばかり驚いた表情をしていた。
その次に私は、ここに来て一番言いたかったことを、YOU1さんに言ったのだった。
「特に、サンシャイン・シティーが好きなんです」
あのときのYOU1さんのリアクションは、多分一生忘れないだろう。とても分かりやすく照れていたのである。
それもそのはず、この曲は氏が作詞した数少ない曲なのである。
P-Model - Sunshine City - YouTube
その後、YOU1さんと軽く雑談をした。大学のこと、住んでいる所のこと、ヒラサワのこと、馬の骨たちのこと。
あのときほど幸せな時間はなかった。有名人と話をするなんて後にも先にもあまり無いことだから(スピードキューブ関係除く)。
結局、私は閉店時間まで滞在した。
それほどに居心地がよかったということもあるのだが、それよりも「閉店放送」が気になったのである。
そして、10時を過ぎた頃に、閉店放送が始まった。
「GAZIOは閉店いたします。皆様が明日もお変わりないことを望みます」
このような趣旨の女性ナレーションが入り、その後にヒラサワの歌が入るのだ。
なんだかとても美しく聞こえたものである。
放送が終わった後すぐに、私は会計を済ませ、YOU1さんに「また来ます」と述べ、店から去ったのだった。
つくばにオープンしたばかりのカフェバー「GAZIO」。
私のようなヒラサワのファンでニュー・ウェーブが好きな人ならば、居心地がいいこと間違い無しである。
つくばまでの交通費がかかるのがネックだが、それだけのお金を出して行く価値のある店だ。
駅から歩いて10分程度。今回のブログで興味を持った人はぜひとも行ってみてはいかがだろうか。
あ、GAZIOへ行く時は私に一報ください。よかったら一緒に行きましょうwつくば駅からの案内もするので。
GAZIOウェブサイト: http://gazio-tx.com/