サラバ、愛しきももいろクローバーよ
スターダストプロモーションに所属する、5人編成のアイドルグループ。
歌と踊りを高いレベルで融合した、近年稀に見るサーカス的なアイドルである。
今や知名度は全国区であろう。芸能人にもファンがたくさんいることで知られている。
東北楽天ゴールデンイーグルズに所属する偉大なピッチャー田中将大も、彼女たちの熱狂的なファンとして知られている。
僕も一時期、彼女たちの活動を追いかけていた。観ていて面白かったし、胸が熱くなれた。
僕は普段アイドルを熱狂的なまでに追いかけることは無かったが、彼女たちは例外で、見ていてとにかく面白かったのだ。
だが、ここ最近その熱が冷めてしまった。
なんだか、たとえばテレビに出ても「あ、そうすか。」的な感じで、流すようになってしまった。
紅白出場も昨年こそ嬉しかったが、今年はそうでもない。
今なおその勢いを止めぬ彼女たちからしたら、迷惑な話かもしれない。
だが、僕の中ではあるひとつの感情によって、彼女たちを今までのように熱く応援しようとは思えないのだ。
僕がももいろクローバーを知ったのは、2011年頃。メジャーデビューしてから1年経った頃だろうか。
妹がどういうわけか「行くぜっ!怪盗少女」を着メロにしていたのが、そもそものきっかけであった。
はじめ僕は彼女たちに対して、「まーた変なアイドルがやってきたのか」と思ったものだ。
AKB48のビジネスとしての成功以来、たくさんのアイドルグループが現れては消える、そんな空気があったように思える。
だが、よくよく聞いてみると曲は悪くない。
特に「Z伝説〜終わりなき革命〜」はヒーローものへのリスペクトを感じて、そういった曲を好む私は大いにブチ上がったものである。
流石は「日本の名曲に対するリスペクトを隠さない男」ヒャダイン提供曲だ!という感じで、楽しんでいたものだった。
そんな私がももクロにグッと惹かれたきっかけが、2012年1月の出来事である。
私はどういうわけかその時、秋葉原のアニメイトかゲーマーズか、そのどっちかの店でウィンドウショッピングを楽しんでいた。
陳列されている漫画たちをぼんやりと眺めていたら、ふと店内BGMで印象的な曲を見つけたのである。
モニターに映し出される、新しいアニメのオープニング映像。
どうやらこの曲は、このアニメのOPテーマであるらしい。
しかし、この曲は何かが違った。ほんのりヘヴィメタル調なのである。
しかも、シンフォニック。当時Rhapsodyを知り、彼らの曲をガッツリ聞いていた私は、どうしてもこの神曲の詳細を知りたくて仕方が無かった。
一体誰が作って、誰が歌っているのだろう?
モニターを凝視し続けること数秒。その答えは、ぼくの度肝を抜く者だった。
"猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」"
作詞・作曲・編曲 前山田健一
ああ、僕はこのとき心の中で思わず思ったさ。「嘘だろ!!!」と。
ももクロがメタルを歌うっていう時点で理解不能だったのに、まさかあのヒャダインがこういう曲を作ってしまうのか、と。
ただ、サビのメロディがまるでロマンシングサガのボスバトルっぽかった。ロマサガの音楽担当だった伊藤賢治氏と対談をし、その中でロマサガに対するリスペクトを惜しまずヒャダインなら別にこういう曲を作っても不思議ではないとすぐに思った。
しかしながら、まさかあのももクロがこういう歌を歌うとは。
なにより、アイドルがシンフォニックなメタルの曲を歌ってくれるとは。それだけでも深く感動したのである。
この瞬間、僕は彼女たちのファンになってしまったのである。我ながら単純である。
その後、私は妹からももいろクローバーZ 1stアルバム「バトル アンド ロマンス」を借り、iPodにインポートし、曲を聞き込んでみたのである。
なるほど、たしかに面白い曲ばかりである。
特に私が気に入ったのは、「Z伝説〜終わりなき革命〜」「ワニとシャンプー」「行くぜっ!怪盗少女」、そして「ももクロのニッポン万歳!」......
ここである共通点に気がついた。僕が気に入ったももクロちゃんの曲は、だいたい前山田健一提供曲である。
名曲と誉れ高い「ピンキージョーンズ」や「D'の純情」があまりしっくりこなかったあたり、これは単に僕とヒャダインの音楽センスに近しいものがあるだけなのだろうと思った。
もしかしたら僕はももクロそのものが好きなのではなく、単に「ヒャダインが提供したももクロの曲」が好きなのか?
このような疑問を抱えながら、まずは彼女たちの活動を追ってみた。
春になり、ももクロが新曲を出すと聞いた。
私は「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」の感動が忘れられなかったので、一体どんな曲が出てくるのかなあと思って楽しみにしていた。
だが、その新曲の発表は、ぼくの期待とは少し逸れていた。
「Z女戦争」。ティカ・αことやくしまるえつこ提供曲である。
ああ、あのまるえつがももクロに提供したのね。ヒャダインじゃないのが少し残念だけど、きっといい曲に違いない......
そう思って視聴したのだが、どうもピンとこない。
元々ぼくの音楽の好みにやくしまるえつこがあまり入らない(ファンが多いのは承知であるが)というのもあろうが、それにしてもなんだか、違和感しか感じなかったのである。
「ワイはももクロちゃんにこんなの求めとらん!」というものである。
だが、相変わらずヒャダイン曲には打ち拉がれてばかりであった。
特に「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」のLIVE映像は、その劇的な展開もあって、涙を禁じ得なかったほどである。
こんなにも深い感動を出せるアイドルグループは、ももクロ以外には無いだろう。ぼくは心の底からそう思っていたのである。
そして、11月の「サラバ、愛しき悲しみたちよ」の発表はむしろ嬉しかった。布袋寅泰作曲・編曲だからである。
元々布袋曲は好んで聴いていたので、ももクロ×布袋という組み合わせはなんだか楽しいように思えたのである。
実際、カッコイイ曲だった。普段のヒャダイン曲にひけを取らぬ名ナンバーだと感じていた。
だが、今年に入ってからなんだかより一層、ももクロというものがよく分からなくなってしまったのである。
最も大きかったのが、2ndアルバム「5TH DIMENSION」の発表である。
まずこのリード曲「Neo STARGATE」を聞いたのだが、ここで何かが違うと思ってしまったのだ。
カッコイイ。カッコイイのだが、何かが違う。
こんな格好良さを、わたしはももいろクローバーに求めていたのだろうか。
分からない。一体ももクロは今どうなっているのか......。
そして曲リストを見て愕然とした。あれほどにまで密接だったヒャダインの提供曲が、わずかに2曲しか入っていないのである。
あのアルバムはたしかにセールス的には成功したかもしれない。
だが、僕は結局あのアルバムを手に入れること無く現在に至っている。
最早ももクロは、ぼくが求めていた方向性からはいなくなってしまった。そう感じずにはいられなかった。
現在、新曲「GOUNN」を聞いている。
クレジットを見る限りではすごく豪華なメンバーを集めていて、きっとたくさんのお金がかけてつくられた曲なのだろうと思う。
実際曲そのものはなかなかかっこいいのである。
しかし、それが「ももクロらしい曲」なのかと云われたら、僕にはそう思えないのである。
ぶっちゃけた話、私立恵比寿中学(どーでもいいけど、エビ中って略されるとおるちゅばんしてるハムスターを思い浮かべてしまう。オサーン)が歌っても成立しそうな感じを感じるのだ。
ももクロはかっこいい曲を歌うからよかったのではない。
生音源ですら打ち込み全開で、ギターだけ生音源というチープな作りの曲を、全力で歌って踊るからこそ、僕のなかでももクロはももクロ足り得たのである。
今やその方向性の先にももクロはいなくなってしまったのだ。
サラバ、愛しきももいろクローバーよ。安い男には似合わない......。
っていうか、もう簡単に云ってしまおう。
「ヒャダイン、カムバック!!!」
「お前はももクロを応援したいのか、それともヒャダインを応援したいのか、どっちなんだ」